本のたくさん詰まった重たい段ボール箱を床に置く時。段ボール箱をゆっくりと床に降ろしていくよりも、パッと手を離して床に落としてしまう方が楽です。というのも、わたし達は地球上に住んでおり重力の影響を受けているために、質量のある物には常に地面の方向に向かって落ちる力が働いています。

ゆっくりとコントロールをしながら物を降ろしていくためには、重力によって地面の方向に引かれる力に程よく”負けながら”降りていかなければいけません。腕相撲で負ける時に、抵抗しながら負ける時は抵抗しないで負けるよりも大きな力が必要であるのと似ています。

腹筋で頭を持ち上げたところからゆっくり降ろそうとすると大変ですが、力を抜いてバタンと降りてしまった方が楽です。これは段ボール箱を床にドスンと置いたり、腕相撲で抵抗せずに負けるのと同じです。しかし、この時に筋肉を鍛えるチャンスがあります。特にマットで行うピラティスでは、ゆっくりとした動きでエクササイズを行うことで重力を上手く抵抗として使いトレーニングを行っています。

(画像:『Pilates Anatomy』より)

日常生活の中でもこのような場面はあります。たとえば椅子に座る時、椅子にドスンと座るということは重力に任せて身体を椅子に落下させていることになります。自分の膝や股関節を使ってゆっくりと椅子に腰掛けることで、座る動作をトレーニングにすることもできます。

このように力学的な視点を取り入れることによって、運動の方向やスピード、セットアップの方法など、運動の選択肢が広がります。

* * * * *

9月開講、コース受講生募集中

身体運動学 
触診法