骨梁(こつりょう)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。骨は硬いものというイメージがあるかもしれませんが、骨の断面を見てみると、内部はスポンジのようになっています。このスポンジのような網目状になっている部分は海綿骨と呼ばれ、また骨の表面にある密度の高い部分は緻密骨と呼ばれています。このように骨は密度を変えることで強さを維持しながらも軽さを保つことができるような工夫がされています。

(図は『カパンジー機能解剖学』より)

股関節を作る寛骨と大腿骨を見てみると、このような骨梁がいくつも隠れています。仙骨から股関節に向かっていくつか線が伸びているのが見えるでしょう。そして大腿骨の中にも骨梁の線が見えます。体重などの重さがかかるような部分では、力学的な負荷に耐えられるようにその方向に応じて骨の”梁(はり)”を作って支えているのです。つまり、重さや重力の力がかかる部分は自然と適応して組織を強くしてくれています。

逆に適切な負荷がかからなければ骨も弱くなってしまいます。寝たきりになると骨が脆くなるのはそのためです。宇宙飛行士が無重力空間で生活をすると骨密度が下がるということは良く知られています。骨密度や筋肉を維持するために、彼らは毎日2時間半の運動をしているそうです。骨を丈夫にするためには適度な負荷がかかることが必要となります。

股関節や膝関節が”すり減って”骨棘(こつきょく)ができることがあります。すり減るのは体重が適切に支えられていないために起こることが多く、骨棘を作ることで関節は接地面積を増やして対応をしようとしていると考えることもできます。関節をサポートするための筋力をつけることは大切かもしれませんが、体重がどのように支えられているのかをもう一度チェックすることも必要かもしれません。姿勢は見た目だけではなく、物理的な効率性にも関わっています。