August 2018

背骨の”積み木”はどこにある?

2018-08-31T16:14:21+09:00

背骨を立体的にイメージしてみましょう。背骨と聞いて、皆さんがよくイメージをする積み木のような部分は、身体のどの辺りにあるでしょうか? 腰に手を当てることによって背骨に触れることができますが、それは椎骨の棘突起と呼ばれる部分です。棘突起の前には指1本分ほどの太さの脊髄の通り道があり、それよりも前に積み木の部分である椎体があります。 腰に手を当てて感じられる背中の表面に近い部分は重さを支えるには適しておらず、重さを支えてくれている椎体は棘突起から指2~3本分内側に入ったところにあります。 これはおへその高さで輪切りにした胴体部分のMRI画像です。白く映っているもの(Vとかいてあるもの)が椎骨です。椎体の前側が胴体のほぼ中央に位置しているのが見てとれます。ピラティスのエクササイズ中には”背骨の前側”へ意識を向ける声かけをすることもありますが、この場合背骨と言っても背中側でなく内臓の奥深くをイメージする方が良いかもしれません。 先ほどのMRI画像でPsと書いてあるものは大腰筋です。椎体のすぐ脇にあるのがわかります。仰向けで脚を動かす時にお腹の奥深くを使っている感覚があるのはこの筋肉が働いているのを感じているのかもしれません。そして横隔膜の腰椎部は内臓の奥深くで、この大腰筋と連結しています。 解剖学の教科書を見て知識として頭で理解することも大切ですが、実際の動きの中でその知識を活かしていくためには身体を通じて分かることが大切です。自分の身体に当てはめてみて、感じることによって”役立つ解剖学”となるのではないかと思います。 [...]

背骨の”積み木”はどこにある?2018-08-31T16:14:21+09:00

重力と運動の関係

2018-08-21T22:00:40+09:00

本のたくさん詰まった重たい段ボール箱を床に置く時。段ボール箱をゆっくりと床に降ろしていくよりも、パッと手を離して床に落としてしまう方が楽です。というのも、わたし達は地球上に住んでおり重力の影響を受けているために、質量のある物には常に地面の方向に向かって落ちる力が働いています。 ゆっくりとコントロールをしながら物を降ろしていくためには、重力によって地面の方向に引かれる力に程よく”負けながら”降りていかなければいけません。腕相撲で負ける時に、抵抗しながら負ける時は抵抗しないで負けるよりも大きな力が必要であるのと似ています。 腹筋で頭を持ち上げたところからゆっくり降ろそうとすると大変ですが、力を抜いてバタンと降りてしまった方が楽です。これは段ボール箱を床にドスンと置いたり、腕相撲で抵抗せずに負けるのと同じです。しかし、この時に筋肉を鍛えるチャンスがあります。特にマットで行うピラティスでは、ゆっくりとした動きでエクササイズを行うことで重力を上手く抵抗として使いトレーニングを行っています。 (画像:『Pilates Anatomy』より) 日常生活の中でもこのような場面はあります。たとえば椅子に座る時、椅子にドスンと座るということは重力に任せて身体を椅子に落下させていることになります。自分の膝や股関節を使ってゆっくりと椅子に腰掛けることで、座る動作をトレーニングにすることもできます。 [...]

重力と運動の関係2018-08-21T22:00:40+09:00

身体運動学 2018 秋学期 スケジュールupdate

2018-08-18T22:01:40+09:00

目に見えない力なんて言うと超能力でもあるのかと思われるかもしれません。しかし、私たちは日ごろから目に見えない力に接してしています。この目に見えない力の1つが重力。地球上に住んでいる私たちには、宇宙空間へ行かない限り常に重力がかかっています。重力があることによって私たちは地球から放り出されることなく地上に居続けることができます。 重力によって物が地球の中心方向へ向かって自然に落ちるように、知らずしらずのうちに身体は重力からの影響を受けています。歳を取ると背が縮むというのは重力によって受ける身体の重さを支えきれずに背骨や椎間板の厚さが減ってしまうとされています。寝たきりになったり、適度な運動をしないと骨密度が減ってしまうのも重力との関わりがあります。 このような重力の影響は、あらゆる運動に関わっています。学生の頃、理科の授業で習ったように、そのような力はある程度推定することができます。どのような力が身体へかかっているのかを頭の中で捉えることができれば、なぜ姿勢が捻れてしまうのか、なぜ痛みが出てしまうのか、などを推測することができるようになります。 身体運動学とは解剖学や物理学などの幅広い理解に基づいてヒトの運動を分析する学問です。この講座ではヒトの身体運動を理解するための力学的な基礎から個々の関節に関わる運動について学んでいきます。 ピラティスなどのエクササイズを学ぶ時、どうやってやるのか(how to)の方にフォーカスが置かれがちで、なぜそのように行うのか(why)まで学べることは多くありません。昨今、ヨガやピラティスで怪我をするというニュースを目にすることが増えてきました。身体に良いものであるはずのエクササイズで身体を痛めることが起こっていることは大変残念です。しっかりとした知識の下、運動の指導を行ってくれるインストラクターが増え、そして安全により効果的に個人個人にあったアプローチができる人が増えることを願っています。 [...]

身体運動学 2018 秋学期 スケジュールupdate2018-08-18T22:01:40+09:00

身体運動学 2018春学期 最終日

2018-08-13T21:35:35+09:00

4ヶ月かけて行った身体運動学のクラス、本日最終日でした。解剖学だけでなく力学的な内容もあり、難しかったかもしれません。専門用語ばかりの教科書を読むのも一苦労だったでしょう。そんな中、皆さんよくがんばって勉強してくれました。 自分一人の勉強では得られない知識を得ることができて良かったと言ってもらえて、やってよかったと思います。皆さんそれぞれのクライアントさんのセッションの時にその知識が役立ち、多くの方への助けになることを願っています。 プレゼントやカードまで、ありがとうございました! またこれからも、根気強くコツコツと、そして楽しく勉強していきましょう。   秋学期(9月末〜)同講座を開講します。詳しくはこちらまで。 [...]

身体運動学 2018春学期 最終日2018-08-13T21:35:35+09:00

触れているものが何か、想像できますか?

2018-08-09T23:16:03+09:00

ピラティスやジャイロトニックなどのエクササイズを指導する時、クライアントさんへのハンズオンをすることが多くあります。あなたが触れているその手の下にはどのような筋肉や骨があるか、イメージできるでしょうか。 わたし達の身体にはランドマークと呼ばれる骨などの隆起があります。これを目印にして、骨や筋肉などの位置を予測することができます。触れることを練習することで、解剖学的なイメージがより立体になってきます。 運動を指導する際には目的とした動きが起こっているかを見る目が大切です。特にヨガやピラティスのインストラクターは医療現場と異なりウェアの上から動きを評価することを求められます。触診技術を身につけ、骨や筋肉を正確に触れることができるようになることで、体表から骨や筋肉の動きを見る助けになります。 触診法のクラスを9月22日、23日に開催します。 ご興味のある方はこちらのリンクをご覧ください。 *すでに基礎的な筋骨格系解剖学の知識があることを参加条件となりますので、ご注意ください。 [...]

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June 2018

肺の風船を膨らませよう

2018-06-11T15:07:11+09:00

休むことなく行われている呼吸。酸素を取り込む役目をする肺はどのようにして動いているでしょうか。肺は肺胞という小さな風船の集まりでできています。この肺胞が自ら膨らんでいっぱい空気が入っていくのを想像するかもしれませんが、実は肺胞は自分の力で能動的に膨らむことはできません。 こんな模型を作ってみました。ペットボトルの下を切り、底にゴムを貼ります。口の部分に緑の風船がついているのでペットボトルの中は密閉されています。オレンジのゴムを下に引くと、緑の風船が膨らみます。そしてオレンジのゴムが上へ戻ると緑の風船はしぼみます。 オレンジのゴムが下がる事でペットボトル内の容積が広がり、気圧が下がります。圧の低い方に向かって空気が入ってくるために、緑の風船が膨らみます。 このペットボトルは肺を入れている肋骨のカゴを表しています。緑の風船が肺胞、そしてオレンジのゴムが横隔膜です。外側の空気圧と比べて内側の圧が低いことを陰圧と呼びますが、肋骨のカゴの中は常に陰圧となっています。息を吸う時にはこの肋骨のカゴの容積が広がりさらに圧が下がることにより、肺胞が膨らみ、肺に空気が入ってきます。 (メルクマニュアル医学百科 家庭版より) [...]

肺の風船を膨らませよう2018-06-11T15:07:11+09:00

May 2018

ヒールを履く影響

2018-05-14T23:14:42+09:00

脚を長く見せたい、おしゃれをしたい。そんな時にヒールを履くことがあるでしょう。ヒールを履くと”かかとの位置が高くなる”だけではなく、様々な影響が身体には加わります。 この図の左側は裸足で床に立っている状態。足関節のところが床と垂直となっています。真ん中の図は、もし身体が裸足と同じ状態で5cmのヒールを履いたとしたら、の図。5cmのヒールは足関節では20度上がった状態になるので、全身が20度前へと傾きます。しかし、身体はこのように前に傾いたままではいられないのでなんとかして床に対して垂直な状態へと適応しようとしたのが右の図です。膝が曲がって腰が反っているのが見えます。 このように、ヒールを履くと爪先立ちのような状態を保つことになります。足の下にはヒールの支えがあったとしても、股関節や体幹周りの筋力が弱く良い姿勢を保てない場合は、先の例のように骨盤を前へ倒して反り腰でアヒルのような格好になってしまったり、骨盤を後ろへ傾けて猫背になってしまったりしてしまいます。 (図はプロメテウスより) また、足関節の構造的にもヒールは不利な状況にあります。足首を起こした状態(=背屈)では足が左右に動きにくいのに対し、つま先を伸ばした状態(=底屈、ヒールを履いたような状態)では足が左右に動く量が増えます。これは、足首の骨である距骨(きょこつ)が前側と後ろ側で幅が違うために、底屈位では関節の遊びが大きくなるからです。ヒールの靴で歩くということは、常に足関節での遊びが大きい状態で歩くということになり、足関節を支えるための筋力も必要となります。 そして、8cm(3インチ)ほどのヒールを履くと、体重の9割がつま先側にかかるというデータもあるようです。ヒールの位置や足よりも上の姿勢によってこの割合は変化するでしょうが、フラットな靴であればかかと側とつま先側で支えられる体重が、随分と前へとシフトするのはイメージできるでしょう。つま先の付け根の部分にタコができたり、足のアーチが落ちてしまうのも、ヒールを履いている人で多く見かけます。外反母趾もヒールに関連して起こる場合があります。そして常に爪先立ちの状態なので、ふくらはぎの筋肉は伸ばされる機会がなく、短く硬くなってしまいます。 [...]

ヒールを履く影響2018-05-14T23:14:42+09:00

あらぬ方向へ曲げてしまう力

2018-05-08T00:02:25+09:00

2つの棒があります。一つは端に丸みがあり、もう一つは端が凹んでいます。この棒の端を合わせて押し合ってみます。お互いの棒が一直線上にあり、力が同じ大きさでお互いに向かいあっている場合は、この棒は動きません。しかし、同じ大きさの力であっても力をかける場所や方向性が違うと棒は動いてしまいます。例えば、下の図のように端が丸い方の棒を少し上から下方向にして押し合うと、棒が合わさっているところでは下向きにずれてしまいます。 膝関節というのは先の例のように長い大腿骨と脛骨に挟まれた関節です。股関節のソケットのように膝関節はカバーされておらず、構造的に不安定な関節です。そのため、半月板や靭帯などのサポートによって安定性を得ています。膝関節には大腿骨より上、つまり身体のほとんどの体重からの力がかかっていることもあり、股関節と足関節に挟まれた膝関節は靭帯損傷が起こったり、変形性関節症が起こったりと痛みや障害が起こりやすい部位です。 膝関節を180度よりも伸ばしすぎて(=過伸展)しまう、反張膝という状態があります。関節が柔らかい人で起こりやすい症状で、”膝を伸ばしすぎないように”とよく注意されているのを耳にします。しかし、膝を伸ばしすぎるのが意図的でないためになかなか修正できない場合が多いです。膝関節を安定化させてくれる筋肉のトレーニングをしても改善しないということもあるかもしれません。一つのケースとして考えられるのは、上半身から骨盤までの重さを脚へと伝えている部分である大腿骨頭の位置が膝関節より前にある状態。最初の棒の例のように体重による力が膝関節において大腿骨を後ろ方向へ押してしまう力として働くことで反張膝を作ってしまいます。 (図は『カパンジー機能解剖学』より) 反張膝は膝関節における前後方向での問題の一つの例でしたが、左右方向でも同じような状況が考えられます。私たちが地球上で生活をするのであれば常に身体の重さによる重力の力が地面方向へと働いています。その力をどのように支えているのか、そしてどのような力が関節に対して働いているのか。それを調整することによって不安定な膝関節も安定して動きやすくなります。

あらぬ方向へ曲げてしまう力2018-05-08T00:02:25+09:00

April 2018

骨の中の梁

2018-05-08T00:03:01+09:00

骨梁(こつりょう)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。骨は硬いものというイメージがあるかもしれませんが、骨の断面を見てみると、内部はスポンジのようになっています。このスポンジのような網目状になっている部分は海綿骨と呼ばれ、また骨の表面にある密度の高い部分は緻密骨と呼ばれています。このように骨は密度を変えることで強さを維持しながらも軽さを保つことができるような工夫がされています。 (図は『カパンジー機能解剖学』より) 股関節を作る寛骨と大腿骨を見てみると、このような骨梁がいくつも隠れています。仙骨から股関節に向かっていくつか線が伸びているのが見えるでしょう。そして大腿骨の中にも骨梁の線が見えます。体重などの重さがかかるような部分では、力学的な負荷に耐えられるようにその方向に応じて骨の”梁(はり)”を作って支えているのです。つまり、重さや重力の力がかかる部分は自然と適応して組織を強くしてくれています。 逆に適切な負荷がかからなければ骨も弱くなってしまいます。寝たきりになると骨が脆くなるのはそのためです。宇宙飛行士が無重力空間で生活をすると骨密度が下がるということは良く知られています。骨密度や筋肉を維持するために、彼らは毎日2時間半の運動をしているそうです。骨を丈夫にするためには適度な負荷がかかることが必要となります。 股関節や膝関節が”すり減って”骨棘(こつきょく)ができることがあります。すり減るのは体重が適切に支えられていないために起こることが多く、骨棘を作ることで関節は接地面積を増やして対応をしようとしていると考えることもできます。関節をサポートするための筋力をつけることは大切かもしれませんが、体重がどのように支えられているのかをもう一度チェックすることも必要かもしれません。姿勢は見た目だけではなく、物理的な効率性にも関わっています。

骨の中の梁2018-05-08T00:03:01+09:00
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